臭いのトラブル

臭い系のトラブル

私は不動産トラブルを扱う弁護士をやっています。
不動産のトラブルは多種多様です。
比較的早く解決するものもありますが、こじれてしまって、裁判沙汰になるものをあります。
不動産は、人間に必要な衣食住のうちの「住」です。
人間にとってあまりにも身近なものなので、トラブルが起きやすいのかもしれません。

私が扱った事例に次のようなものがありました。
賃貸住宅での話です。
そこは新しい部屋でした。
借りたのは若い女性。
入居後、1週間ぐらいして、具合が悪くなったそうです。
建材のホルムアルデヒドが原因でした。
ご存知のように、ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因になります。

ホルムアルデヒド

ホルムアルデヒドの基準値はあります。
しかしそれを超えた場合の罰則等は、まだ出てきていません。
だからこれは非常に難しい事例でした。
女性は不動産屋や建築会社に、体調が悪くなったことを訴えました。
業者は、部屋に空気清浄器を取り付けて、対応しました。

その処置によって、女性の具合はすこしは良くなったようです。
それでも、腹立ちは収まらず、私のところに相談に来られました。
損害賠償を請求したいとのことでした。
女性の気持ちは理解できました。
せっかく借りた部屋に異臭が立ち込めていたら、どんな人でもがっかりします。
おまけに、健康被害も出たわけで、女性が怒るのは無理もありません。
しかし基準値を超えたホルムアルデヒドに対する罰則はありません。
おまけに、不動産屋と建築会社は、空気清浄器を提供しているのです。
女性の訴えに耳を傾けながら、やっかいなケースになりそうだと私は感じていました。

女性の訴えは、裁判所で認められませんでした。
シックハウス症候群になる化学物質過敏症のことは、学会で定説が確立していないこと、この病気は個人差が大きいので、どんな人でも同じ環境で発症するとは言えないことなどを考慮に入れ、この女性が病気になることは、業者には予想できなかった。
というのが、裁判所の判決の主な内容です。
この問題は、騒音のことと似ています。
騒音のことも不動産トラブルになりやすいですが、その実際の被害を立証するには難しい面があるのです。
それからこのケースは、業者が空気清浄器を提供していることも、不利に働きました。

このようなトラブルはこれからも起きるでしょう。
しかし基準値を超えたホルムアルデヒドの扱いがはっきりしていないので、訴えたほうに不利な判決が、これからも出されるでしょう。